第5チャクラに関連して、言葉の力についてもう少し書いておく。
言葉を律するというのは伝統的に、エネルギーを制御するための基本的な訓練の一つだ。神社であげられる祝詞、教会のミサ、そして魔術やファンタジー物語に出てくる呪文などは、言葉のパワーを象徴的に示した例。
しかし、言葉を律することでエネルギーを管理し使いこなすことは、本当は日常生活の中でも大切なのだ。
言葉は内面の映し鏡
ユング派の分析家などならもちろん、言葉のニュアンスや、それによってもたらされるイメージに非常な注意を払う。それは伝統的なシャーマンが言葉を生き物として注意深く扱う態度にも似ている。
両者はいずれも、言葉の後ろには普段、人が気づかない膨大な意識の領域とパワーが存在するということを知っている。
もちろんヒーリングに携わる人間も、言葉の持つ力と意識的な使い方については心得ておく必要がある。
しかし実際には、ヒーリングや精神性について学んでいる人でも、言葉をエネルギーとして用いることをを知らないことが意外と多い。あるいはクライアントに対する人間的な配慮はできているのに、言葉の力を意識的に使いこなすことを知らないためにエネルギーのロスを招いていることもある。
言葉を使いこなす意識的な訓練を経ていない人では、日常的な言葉遣いはその人の内面のシンプルな映し鏡だ。無意識の言葉使いには、成育環境や親の影響が強く出る。とくに人が感情的になった時、口をついて出るのはしばしば、親から自分が言われた否定的な言葉だ。
子供時代を通して自分の無意識に刻み込まれた否定的な言葉は、我々を縛り、自分で自分の足を引っ張らせ、あるいは感情的になった時に配偶者や子供、親しい人々にぶつけられて相手を無意味に傷つける。
心理療法を受け始めた人は、自分の無意識がどれだけ親から詰め込まれた否定的な言葉でいっぱいであるかに気づき、がく然とする。自分のものだと
思っていた考えが、実は自分のものではなかったことに気づく。
この気づきは、とても重要な自己の癒しと成長のステップだ。
自分の言葉使いの無意識のパターンに気づき始めることは、自分について知り始めるための非常に重要な鍵であり、それはスピリチュアルな道のりを歩むための最初の一歩でもある。「汝自身を知れ」、そしてそのもっともわかりやすく重要な鍵は、自分の使う言葉だ。
言葉とエネルギー
School of Healing Arts and Sciencesのフラワーエッセンス療法やアルケミーのクラスでは、繰り返し「言葉の力」と、祈りやアファメーションを効果的に用いる方法について教えてきた。
アファメーションや祈りの言葉は細心の注意を払って選び、そしてエネルギーを以て魂を吹き込む必要がある。
だが、言葉を律することでエネルギーを管理し、効率よく使う習慣は、普段の生活の一部にもなるべきなのだ。
お祈りをする時だけ、きれいな言葉を選んでも、普段の生活で使う言葉に自己否定や悲観的態度、社会や家族から受け継いだ無意識のパターンに染まった言葉を使い続けるなら、アファメーションが形をとることは難しいし、祈りが応えられた時にも、しばしばそのことに気づかない。
言葉を律することが重要なのは、言葉は思考を制し、思考のエネルギーを動かすから。人間の内的パターンは言葉に出るが、逆に言葉のパターンを変えれば思考のパターンを変え、内的パターンを変化させることができる。
これはエネルギーが肉体に影響し、肉体がエネルギーに影響するのと同じ二方向性の仕組みだ。
言葉が与える重大な影響をすべての古代文化は肌身に感じており、日本では「言霊(ことだま)」という言い方でそれを表した。「言葉に魂が宿る」、言葉のもつ生命力とパワーをこう表現したのだ。
語り手を離れたあとも言葉は独立のエネルギー体として存在し続け、さまざまな影響を与えると古代の人々は実感を持って感じとっていた。
人間同士のコミュニケーションだけでなく、祈祷や祝詞など、「神」と呼ばれるものや目に見えない存在とのコミュニケーションにも、エネルギーの通路としての「神聖な言葉」は欠かせなかった。
「祈り」は明晰に言葉という「形」にしなければならない。言葉にすることなくあいまいに何となく願ってもそれは祈りではない。
聖職者は本来、言葉の力をマスターした者として「神聖な言葉」、祈りの専門家だった。必要に応じて適切な言葉を選んで祈りを織り上げ、エネルギーという生命をのせて解き放つ。
そして言葉にエネルギーをのせることができるためには、すべてのチャクラがよく機能している必要がある。
とりわけ第1チャクラの生命力と第2チャクラの感情の力は欠かせない。第1チャクラと第2チャクラが充実していないと声に力がない。もそもそと生気のない声で祈りやアファメーションを読んでも、そこにエネルギーを形にする力は伴わない。
他方で、言葉の力と沈黙の力は表裏一体。逆説的なようだが、沈黙できない人には言葉の力を使いこなすことはできない。言葉を律するということは、時には沈黙を守ることを含む。
いくらしゃべるのがうまくても、適切な時に黙っていることができないのは、エネルギーを垂れ流しにしているのと同じだ。あるいは一方的に祈りを述べるだけで、祈りに対する答えに耳を傾けることができない。
必要な時に口をつぐみ、必要な時に明晰に言葉にする。これができれば、言葉として表現する力と、それを発するタイミングという第5チャクラのパワーを身につけていることになる。
そしてそれはそのまま、第5チャクラの「音を形にする」「高い世界に描かれた青写真を、物質世界に実現する」能力につながる。
『エネルギーの海 スピリット通信』(vol. 27)
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